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「お風呂屋さんいきたい」
小夜が言ったのは、晩ご飯を食べ終わって、みんなでぼんやりとテレビをみているときだった。
「ええねえ。行ってきいな」
母の返事をきいて小夜はぱっと笑顔になり、よいしょとこたつから這い出して十字マークの描かれた木箱を掴んだ。そこから十枚ほどに綴られた紙を取り出して、ミシン目に沿ってピリピリと三枚分切り取っていった。
「なんでくすり箱に入れとるんじゃ」
「ここじゃと忘れん」
ハイ、と目の前に銭湯の入浴券がおかれる。
「それにお風呂は薬みたいなもんじゃろう」
入浴券には母と子がしあわせそうな顔をして湯に浸かっているイラストが印刷されていた。
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