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episode 2 再開
扉の前にはベビーカーがぽつんと置き去りにされていたのだ。
ベビーカーの中には。生まれてまだ間もないと思われる乳飲み子が眠っていた。
マリは部屋の中へ赤ん坊を連れて行き、抱き上げて常に予備でおいてある共同リビングのベビーベッドに寝かせると、余分な毛布をかけてやった。
赤ん坊をどけた後のベビーカーに目をやると、そこには手紙が1枚。
彼女は手紙を広げて内容を確認した。
”院の口座にお金は振り込み済みです。
差出人 M”
彼女はその手紙を裏返してみた。
真っ白だった。
”たったのそれだけ…名前は…年齢は…?
いったい何を考えているのかしらまったく…
ひどすぎる”
と心の中で嘆いた。
その日の昼過ぎ。
院長が帰ってきた。
寒そうにコートを体に巻きつけ、裏口から白い息を吐きながら、只今とホールに向かって声をかけた。
院長は年老いた優しい母親のような雰囲気漂う、ふくよかな女性だ。
マリがすぐに駆け寄り今朝の出来事をまくし立てた。
赤ん坊のこと、手紙のこと。
それ以外に何も無かったこと、全てを一気に話終えた。
このなんとも心を突く出来事を聞いた院長だったが、心とは裏腹にニコッと笑い。
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