0杯目 ある町の隅っこ

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この町の開発が始まり、駅の近くにいくつもの新しいマンションが建設され、新築マンションへ人が移り住み、この町が新しい住民ばかりだった頃、私も同じようにこの町へ移り住んだ。 スーパー、階段、マンション、学校、交番、駅、バスの通ってないバスターミナルもみんな新品。 そして、新品の建物の隣にはいくつもの空き地が工事を待っていた。 1棟、また1棟と新しいマンションが建つ。 1軒、また1軒と新しいチェーン店がオープンする。 そうやってこの町は大きくなり、中途半端な開発のまま時が過ぎて行った。 大人になった私は、どこに行くにも不便なく、なおかつ静かな都内に引っ越した。 住宅街の人々が寝静まった深夜が大好きだ。 大地の呼吸が聞こえてくるような、大都会の静けさ。 数時間もすれば、人々が目覚め、もの凄いスピードで物事が動き出す。 無機質な中に小さな温もりを見つけるような。 そんな大都会で自由気ままに、人生ぐるっと一回り走り抜け、そろそろ二週目に差し掛かった頃。 なんだか再びこの町へ戻ってきた。 ある町の隅っこに。
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