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第三部:その時を待ちながら厳冬に事件が続く
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明くる朝、1月5日。 東京は曇天。
千葉県で聴き込みをする木葉刑事と司馬刑事は、地元の警察署の刑事と組んで奔走する。 冷たい雨が降る、気温6度。
一方、東京では飯田刑事など篠田班の刑事が、殺人事件の捜査をする。 まだ逃げ回っている肥田は、嘗て芥田とも繋がっていて、芥田とは地上げなどで土地転がしをしたり。 時には地面師と結託し、企業を騙した過去が浮き上がって来る。
また、一斉捜査で3ヶ所同時にガサ入れをしたが。 その逮捕者の供述より、遂に怪しい人物が浮上。 元は国立大を卒業したと云うのに、薬物の売買をコンビニの様に手軽にして利益を得ようと画策した、“松潟”なる人物。 過去に一度、その罪で捕まって居るが、既に出所していた。
捜査本部は、その二人の男性の姿を追う。
更に、黒澤が他に殺害しようとしていた人物の捜索と捜査も続く。 どの人物も、組織から依託され住居を用意したり、海外の銀行に口座を設けて金を移したりしていた。 その中には、確保された芳野なる女性も含まれるが。 不思議な事に、彼女を捜していたのは黒澤だけではないらしい。
助かった者に話は聴けるが、黒澤と謎の第3者との依頼のやり取り、金のやり取りは残るものの、全て携帯端末からのメール。 足が着かないものを使われていては、捜査のしようがない。
木葉刑事が司馬刑事と戻り、不審人物を乗せたタクシーの運転手からの証言などを報告する。
報告を聞いた美田園管理官は、その不審な人物が駅から電車を使って東京に向かったことを聞き。
「木葉刑事。 明日からはその不審人物の捜索を、司馬刑事と堤刑事を伴い御願いします」
「解りました」
堤刑事は、近隣所轄からの応援で来ている刑事だ。 小柄で頼り無い印象の刑事で、木葉刑事と雰囲気が似ている。
流石に、木葉刑事にも休みを与えるべきと八重瀬理事官もいい。 本日は早い時間で上がる様に言われた木葉刑事。
司馬刑事と二人して車で戻ったが、まだ夕方の4時にもならない。
「木葉さん、今日は早く帰れますな」
司馬刑事に言われ、柔らかく笑う木葉刑事。
「司馬さんみたく家族が居る訳でもないので、別に早く上がれなくても…」
「タフですね、貴方は」
歳は離れているのに、司馬刑事は木葉刑事を見下さない。 一緒に仕事をしていて、やはり認める処が在るのだろうか。
「処で司馬さん、買ったお土産を忘れない様に」
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