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言われてハッとした司馬刑事。
「あっ、刑事課の部屋に忘れてた」
「あはは、奥さんに笑われますよ」
「いやいや、それ処じゃ有りません。 怒られるっ」
「では、御疲れさまです」
「はいはいーっ」
慌てて刑事課に向かう司馬刑事を会議室から見送る木葉刑事だが。 その足で続く様に廊下へ出れば、遠く向こうで階段を降りた鑑識員の姿が見え。 その後を行く男性の霊の姿も視えた。
(何だろう…)
後を追う様に向かってみれば、霊は裏口に向かう。 警察署の関係者専用の出入り口で、そのドアを開くと丁度、警視庁に帰る車に乗り込む瓶内鑑識員が。
「あら、木葉さん。 今日はお帰り?」
「あ~、警視庁に行きたいんで、出来ましたら乗せて貰おうかな」
「なら、早く」
「はいはい」
窓に格子の網が入る群青色の鑑識専用車、8人まで乗れる。 まだ、外は雪が仄かにちらつく。
「出して」
運転する鑑識員に言う瓶内鑑識員の隣に座った木葉刑事。
走り出す車両に、粉雪が集まる。
「はぁ、また雪。 雪だるまを造るには、今年は最適だわ」
窓の外を見て、こう言った瓶内鑑識員。
だが、窓の外を眺める木葉刑事は。
「電車が送れたり、車が渋滞したり、雪は東京だと面倒な限りですよ」
「ホントね」
此処で、瓶内鑑識員が手にした資料を見て。
「ね、押収された車両、入れ替えられた車両とタイヤだけ交換されてた。 これって、完全に警察の捜査を見越した偽装工作よね」
「多分は。 でも、遣り方はちょっと古いッス。 タイヤ痕が偽装できても、防犯映像は誤魔化せなかった」
「えぇ、それが助かったわよ」
「瓶内さん」
「ん?」
「押収した車両の鑑識作業は、大丈夫ですか?」
「今も、仲間がやってる。 私は、これまでに解った情報を届け、説明をしに来ただけ」
「専用用語とか入ると、理解するのも骨が折れますから。 説明して頂けると、此方も有り難いッス」
「でも、被疑者に繋がらないと、なんか気が重い…」
瓶内鑑識員も、どうやら疲れているらしい。 だが、捜査なんてそんなもの。
「ま、一年以上も掛かる事件だってざらに有ります。 スタミナ切れしないようにしましょうよ」
すると、瓶内鑑識員が木葉刑事に近寄る。
「ね、処で。 貴方、鴫のことをどう思う」
「は?」
何の話かと見れば、瓶内鑑識員の表情が珍しく女性らしい。
「あの鴫、誰かを好きみたい。 んで、噂の一人が、貴方って聞いたわ」
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