第三部:その時を待ちながら厳冬に事件が続く

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「木葉、何を捜査する? 関係者への事情聴取か? それとも、組織を調べるか」 だが、木葉刑事は。 「久坂さん、一日だけ疑問潰しをさせてくれませんか?」 「ん? 何の疑問だ」 「被害者、師岡早希の行動について」 「それは、もう…」 「お願いします」 頭を下げられては、久坂刑事も弱く。 被害者の女性、師岡早希の行動を洗い直す事から始めた。 月に何度か、銀座や六本木にタクシーで出掛けては、高価な貴金属類を購入している。 その購入履歴を夕方まで調べ、時間単位で借りれるフリーオフィスに入った3人。 調べた木葉刑事は、余り出歩かない彼女の生活からして。 「この女性の宝石やらブランド物を買うのは、買い物依存症や衝動買いってよりは、財テク感覚に近いのかな」 夕方まで調べ、前に調べたリストと並べる久坂刑事も。 「その推測は、当たってるかもな。 彼女名義のクレジットカードや口座には、分割して数千万の金が在った。 ネットオークションを利用して転売した処から見て、マネーロンダリング込みの貯蓄じゃないか?」 司馬刑事より。 「それは、詰まり。 違法な手段で得た金銭で物を買った後。 転売して正式に自分のポケットマネーにするって事ですか」 「恐らく。 こうすれば、確定申告でもバレ憎い。 偽名名義のクレジットカードや口座ならば、尚更に…」 「悪人にこう云うのも何ですが、脱税の額も凄そうだ」 頷く久坂刑事は、麻薬や売春でどれだけの売り上げを出していたのか気に成った。 情報を纏めた木葉刑事は、まだこれ迄の逮捕者の事を調べ切れてないので。 「手の内に確保した全てに調べが行き渡って無いですからね。 まだまだ、余罪が在るんでしょうね」 司馬刑事としては、あの波子隅の調べをしたかった。 「私個人としては、波子隅の余罪追求をしたい。 アイツも、まだまだ何か隠してそうだ」 だが、波子隅は完落ちして余罪を吐いた。 もう、追求した処で、罪の確定を長引かせるだけの様にも思える久坂刑事。 「さて、本日は此くらいにするか?」 夕方の6時を回る。 木葉刑事は、家庭の在る司馬刑事を憂い。 「そうッスね」 警視庁に帰り報告をする。 この情報は、二課や組織犯罪対策室が吸い上げる筈だ。 金の流れを追えば、その先に闇組織が有っても可笑しくない。 その日の夜、司馬刑事を帰した木葉刑事が会議室に居ると。 「木葉、まだ資料とに睨めっこか?」
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