第三部:その時を待ちながら厳冬に事件が続く

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「今回は、発砲事件や立て続けに殺人が発生し。 薬物や売春について有名人の逮捕が相継いで、じっくり一点に絞った捜査を出来ませんでしたからね」 「確かに、そうね」 「ま、明日に調べてみますよ」 「解ったわ。 じゃ、風邪をひかない様にして頂戴。 インフルエンザで、もう8人も人が居ないから…」 「大丈夫ッス。 バカは風邪をひかないらしいですから」 こう一礼する木葉刑事に、美田園管理官も微笑み。 「バカ・・ね」 「美田園管理官も、寝不足が続くと老けますよ」 こう言って出て行く木葉刑事。 「………」 一人に成ると、黙ってコラーゲン入りのチョコレート菓子を食べる美田園管理官だった。 次の日。 漸く、関東地方らしいカラリと晴れた日が来た。 雪の影響が残る都心だが、馴れて来ると遅延も焦らなくなる。 早目の電車で出勤して来た司馬刑事は、会議室に入ると。 「司馬さん、聴きました?」 と、若手の女性刑事が寄って来た。 「何だ?」 凄く嫌な顔をした女性刑事で。 「昨日の夜、木葉刑事と木田一課長が二人だけで何処かに出掛けたって…」 「それがどうした?」 「変じゃないですか? 丸で依怙贔屓の相談みたいです…」 女性刑事の穿った見方に、司馬刑事の方が呆れた。 「馬鹿か、君は。 それじゃ、これまで木葉刑事が手柄に近い捜査ばかりしていたみたいじゃないか」 「だって、そうじゃ有りませんか。 麻薬を発見したり、死体を発見したり、犯人を発見したり…」 純然たる僻み根性を見て、司馬刑事は呆れ果てた。 「安心しろ。 君じゃ、彼みたいに手柄には一生ありつけない」 コートを脇に抱えた司馬刑事は、取り合いたく無いと席に向かう。 一方、木田一課長の事を知る八重瀬理事官。 眠そうに起きて来た木葉刑事を呼び止める。 「木葉君」 「はい?」 食べる仕草をして見せる八重瀬理事官で。 「昨夜は、木田君とコレかい?」 「はい。 運転手の彼経由で、クギ処かトゲを刺されますよ」 笑う八重瀬理事官。 「付き合う君も、実にキモが太いね」 ゲンナリする木葉刑事で。 「もう、馴れて来ましたよ」 「あはは、望月君なんかは、彼が係長時代からそうだよ」 「望月さんか…。 何か、攻略法とか有るのかな」 「いやいや、彼は‘我慢’って言ってたよ」 「ダ~メだこりゃ、使えねぇ…」 警視庁内のコンビニで買ったパンやおにぎりを入れた袋を片手に、席に座る木葉刑事。
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