第三部:その時を待ちながら厳冬に事件が続く

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トドメの一撃となる冷たい言葉に、男性刑事は頭を下げる事もしないで立ち去る。 織田刑事や里谷刑事の後ろでは。 (流石、氷結の無表情なお姫様。 言う言葉も冷たく、オッカナイ) (だがよ、今更に木葉刑事の事にイチャモンを付けてとーするよ) (噂をただ鵜呑みにするんだ、そんな事しか考えられない奴なんだよ) (捜査で手柄を挙げて、見返そうとか無いのか?) (ま、木葉刑事の才能には、嫉妬したい気持ちも解るがな。 出来れば、俺が彼と組みたい) (手柄泥棒~) (でも、木葉刑事の手柄の挙げ方って、普通じゃ無いわ) (てか、何に割り当てられても、手柄ってあがるかのか?) (だから、木田一課長も、他の管理官も頼るんだ。 あの女狂いの笹井管理官の指揮の下で、有賀を追い詰めた奴だぞ) (言えてら。 捜査に関してだけは、あの渋谷署の嶽さんや亡くなった古川刑事も買ってた。 仕事の出来ない奴が、こうして足を引っ張る) バカらしく成った里谷刑事。 隣の織田刑事に、 「バカって、死なないと治らないのかな」 と、言うと。 「あんな風に、所轄の刑事の頃から言われてた。 寧ろ、よくイジケないで此処まで来たよ」 だが、あの悪霊の起こした事件を木葉刑事と見てきた里谷刑事。 「あれぐらいでイジケてたら、佐貫さんや古川さんと一緒に、命なんか張れなかった」 「え?」 里谷刑事の言葉に、織田刑事が顔を向けた。 「私は、警護課の一人として、あの事件を間近で見てた。 あの壮絶で難解な事件に、彼は佐貫さんや古川さんと一線で戦ってた。 こんな小事、どうでもいいわ」 「・・なるほどね」 里谷刑事の経歴の一端を思い出した織田刑事は、ホロッと笑い。 「さて、税金泥棒って怒られる前に、仕事するかね」 窓から雪模様を見る里谷刑事は、 「寧ろ、噂より雪をどーにかして」 と、コートの襟を立てる。 尚形係長の檄も飛び、捜査員がぞろぞろと出て行く。 篠田班長は、遠くから。 「管理官、木葉が迷惑を掛けまして…」 だが、美田園管理官は済ましたままに。 「彼の迷惑より、勘違いの迷惑の方が困ります。 捜査が進まない」 「あ、はい」 資料から視線を外す美田園管理官。 「私も、刑事の頃は手柄に飢えてました。 でも、木葉刑事の様に、あんな無欲恬淡として仕事に結果をもたらせる人物も居るとは…」
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