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八重瀬理事官も、
「彼ほどに不思議な刑事は、私の知る限りで他に一人しか居ないよ」
美田園管理官が、八重瀬理事官を見返した。
「そんな人が、他にも?」
心当たりが在るのは、尚形係長で。
「恐らくは、彼の叔父で、木葉恭二・・ですね?」
八重瀬理事官は、小さく頷いた。
が。
「だが、才能は今の木葉の方が上かな。 あの片岡さんや進藤さんですら、木葉の才能を認めて止まない」
そんな首脳陣も、他の者が言う意味が解らない訳ではない。 木葉刑事が証拠の意味を理解する早さは、時として次元を超える。 その理由さえ明確に解れば、この面倒な事態も無くなる筈なのだが…。
そんな本部の様子など、知りもしない木葉刑事。 雪の中を二台の車で蒲田へ。 渋滞中の道路だから、行くまで1時間以上は軽く要するか。
後部シートに座る堤刑事は、前髪を左分けにする中年の眼鏡姿。 伸長も160センチに届かない小柄な人物である。
車が走り出すと、運転する司馬刑事が。
「木葉さん、今日は大変ですよ」
「えぇ、雪の影響で大変ッスね。 明日までは、断続的に降るらしいですよ」
「困ったな。 明後日の非番には、長谷部さんの見舞いに行こうと思ってるのにな」
「長谷部さん、まだ出血が止まりきってないみたいですね」
「動かないと、大丈夫らしいんですがね。 人間ですから、なんやかんや動きますでしょう?」
「えぇ。 それに、何でも血糖値が高いらしく、処置後の治りが遅くなりがちとも聞きました」
「自分も、長谷部さんも、かりん糖や饅頭が好物なんでね。 其処は、どうも…」
「あ、司馬さんも血糖値が?」
「若干ですが」
駄話をしていると、後部より堤刑事が。
「あの、年明けより応援で来たんですが。 拳銃の一件は、もう解決したんでしょうか。 忙しくて教えて頂けないので…」
前の二人は、この事件を端っから関わる。 向かうついでに、と話して教えた。
木葉刑事が蒲田に向かうと時を並行し、篠田班の皆も捜査に動いている。 逃げている肥田は除き、後嶋多氏とその関係者の件は、二課や組織対策室の仕事になり手から離れる。 代わりに、組長殺害の捜査、証拠品の捜査、聴き込み、黒澤の捜査に重点が置かれる。
この寒い外へ聴き込みに向かう刑事達。
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