新年。

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 久遠は唇を噛み締め、肩を震えさせる。厳かに頭を下げる久遠の姿に、錦も涙を滲ませた。一刀は、一瞬表情を和らげたが直ぐに引き締め、言葉を続ける。 「其方へ移り、無償で半年の労働を命ずる。職務は以前と変わらぬ。お前の仕事には、以前より不満も不安も感じた事は無い……其れは、嘗ての俺も認めざるを得ない処だった」  頭を下げたまま、己へ与えられる罰を聞いていた久遠だが。 「勿体無い御言葉に御座います……しかし、以前の私は司法を任されておりました……私に人を裁く資格は、最早御座いませぬ。当面はともかく、職の変更も御検討頂いた方が……」 「言ったろう、お前は私の為に動けと。お前以外に任せられるものではないのだ……私の為に、其の思いに耐えて欲しい」  此方も一刀が否定する。暫く、互いに真っ直ぐ見詰め合っていたが先に久遠が軽い息を吐いた。 「本当に、私は貴方に敵いませぬ。何時もそうでしたな……思えば、私の帝への強い思いは嫉妬であったのやも知れませぬ……其の君主たる才覚への」 「久遠……」  久遠は諦めた様に微笑んだ後、其の身を正し一刀へ厳かに拝した。 「慎んで、お引き受け致しまする――」  久遠の強い決意の声に一刀と錦は、同じ思いで微笑み合った。  久遠の部屋を後にした一刀と錦は、共に一刀の私室へとやって来た。滅多に入る事の無い此の部屋は錦にとっては新鮮で、少し緊張してしまう。毎年、此の日一刀が過ごす場所等は家臣、女官達も把握しているのだろう、部屋は既に暖められていた。相変わらず、美しく整理された此の空間はやはり何処か神聖に見えてしまう錦。  部屋の奥、火鉢の側に腰を下ろした二人。
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