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錦の肩を抱き、微笑む一刀。
「俺こそ、お前を手に入れられた……母上には、御約束を守って頂きたかったものだな」
最後に、小声で呟いた一刀の言葉に錦が首を傾げた。
「え、約束?」
「此方の話」
一刀は只柔らかく笑うだけだが、錦はつい見惚れてしまう。
「あ、あのっ……一刀はお正月、何時も何をしていたのかな?」
妙に気恥ずかしくて、誤魔化す様に話を反らす錦。一刀も突然何をと流れが読めぬが、錦へ問われたので。
「俺の正月は大体あんな感じだ。其れが済むと特に何も……後は大体道場か、射場か……酒を飲むか……」
「女子(おなご)と?」
突っ込みが来た。一瞬間が出来、一刀の表情も無となるも。
「一人でだ」
「そっか……」
顔を背け呟いた錦の肩を抱き、引き寄せる一刀。
「お前と出会う迄の事だ……機嫌を損ねたか……?」
首を横へ降る錦。
「怒って無いよ……でも、何だか寂しい……変だね、去年の今頃は一刀の事なんて全然知らなかったのに……」
俯く錦の顔を優しく上げた一刀。其のまま、唇が塞がれる。少し深い口付け。
「んっ……」
徐ろに一度唇を離した一刀は、錦の髪を撫でながら、其の耳元へ口付ける様に囁く。
「言っただろう、恋慕う者はお前が初めてだと」
「う、うん……」
擽ったい感覚に、錦は頬を染め体を強張らせた。僅かに震える姿が何とも可愛いらしい。一刀は錦の袴の帯を解いていく。
「あっ?……えっ、待って……!い、今?」
錦は袴を掴み、一刀を制するが。
「今」
きっぱりと答えられた。一刀は軽々と錦の体を抱き上げると、其のまま御帳へ用意されていた床へと運ぶ。柔らかな布団へ丁寧に下ろされた錦は、僅かに乱されてしまった衣を掴み何とか肌を隠そうとする。
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