新年。

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「あ……神楽達、だね……」  錦はひきつりつつも笑顔で一刀を襖へと促す。一刀は影を背負い、動きが止まってしまった様だが。気不味そうに、身を離すと乱された衣を早々に整えていく錦。目が座った一刀が、徐に立ち上がり襖へ向かう。乱暴に開かれた襖の向こうへ並ぶのは、神楽を中央にした幼子が三人。両側の二人は霞より下の従兄弟の子息達。神楽より頭一つ小さな少年は疾風(ハヤテ)、其の疾風より又小さな頭は、疾風の弟の伊吹(イブキ)だ。可愛いらしい三つの頭上を凍てつく冷気をも漂っていそうな一刀が睨み付けている。 「お前ら……父母の元へ帰れ」  強く出た一刀の声にも怯まない三人。依然負けずに一刀を見据える強い瞳。 「帝に御用は御座いませぬ」  先ず出た神楽の声。 「御座いませぬ」  続いた疾風。 「いっとぉちがう、こうひさま」  そして伊吹が。 「おのれ……糞餓鬼共め……」  ――可愛くない――三人の幼子を前に、青筋を浮かべた形相の一刀。折角、夫夫(ふうふ)水入らずの甘い時を過ごせるかと思えば、とんでもない水を差された。そんな一刀の背後より、衣を整えた錦が顔を出した。 「やぁ、私に御用かな?」  錦の姿に、三人が満面の笑顔を見せる。先程一刀を見据えていた表情とはうって変わって、可愛いらしいあどけない笑顔。 「后妃様!遊びましょう!」 「遊びましょう!」 「こうひさま」  伊吹が嬉しそうに錦の衣を引っ張ると、錦は笑いながら一番小さな伊吹を抱き上げた。出遅れた二人は羨ましそうに伊吹を見上げていたが。 「分かったよ、何する?」
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