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「こんなに穏やかな気持ちで迎える正月は久し振りで……后妃様のお陰で、暗い雲が去っていった様です」
蒼玄が穏やかに微笑み、再び錦へ頭を下げると、樹も同じく。
「お、お止めください、私は何もしておりませぬので……」
錦は言いながらも、微笑みはにかんだ。頭を上げた二人は、改めて錦へぴったりと引っ付いている小さな三人を見た。
「后妃様は此の三人に捕まりましたか。大変でしたな」
樹が苦笑いを浮かべ、そう言うと蒼玄も笑う。しかし、首を横へ振る錦。
「いえ、とても楽しめましたよ。ね」
「はい!」
又、先程と同じ様に綺麗に揃った三人の声が響く。此処で、一刀が二人の姫へ勢い良く羽を突き返した。其の速さに幼い日和と皐月は返す事が出来ず、地へ羽が落ちてしまった。落ちた羽を驚き眺めていたが、一刀へ膨れっ面を向ける日和と皐月。
「帝、狡い!」
「もう一回!」
抗議し、一刀へ走り寄る日和と皐月。羽子板で肩を叩きつつ、二人を見下ろす一刀。
「喧しい。何度其の『もう一回』に付き合ったと思っている」
更に膨れる二人の頬。一刀は鼻で笑い錦の元へ歩み寄った。
「一刀には、日和と皐月が来てたんだね」
「お前らが行って直ぐ捕まった」
「いっとぉ、おえかき」
錦に抱かれていた伊吹が近付いた一刀の顔へ手を伸ばした。どうも頬にある墨が気になる様だ。何となく、伊吹へ顔を寄せてやると伊吹は嬉しそうに其の頬を撫でた。そんな伊吹の様子に、眉間へ皺を寄せた一刀。
「何を書いたんだ?彼奴等……」
「可愛い兎が頬にいるよ」
錦が笑いを堪え、告げてやると一刀の眉間へ更に寄る皺。聞こえた舌打ち。
「丸にしろと言ったのに……」
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