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「とてもお似合いに御座います、帝」
一刀の肩へ親しげに掌を置き、爽やかな笑顔を見せる蒼玄。
「真、味わい深い……我が子の才に身震いを覚えておりまする」
感慨深く頷く樹。一刀は二人の従兄弟へ口角を上げ、ひきつらせている。
「莫迦にしておるだろう……」
幼い頃よりの付き合い、分からいでかと一刀。そんな大人を無視して、無邪気に錦へ駆け寄る日和と皐月。
「后妃様、私達帝に勝ったのですよ」
「兎可愛いでしょう?」
二人とも、錦を見上げるのは満面の笑顔。
「うん。凄いね、兎も上手だ」
笑顔で頷く錦へ、二人の背後より影が迫った。
「違うだろう、先程ので引き分けになるぞ。さぁ、顔を出せ。髭を書いてやる」
と、一刀が宣言すると。
「日和に髭!?やり過ぎだ、無体だぞ。一刀……!」
思わず儀礼を欠いた抗議。素が出てしまった様子の蒼玄。
「そうだ!可愛い皐月に髭だけは……!」
想像しただけで辛いと嘆く樹。
「親莫迦共め……勝負は勝負だ。東の女子(おなご)ならば、覚悟はあろう」
一刀は鼻で笑い、筆を手に錦の衣を掴み後ろへ逃げ隠れた日和と皐月へ影を落とす。此の光景に、錦は抱いていた伊吹を静かに下ろしてやると、一刀の前へ出る。
「西にて育った男子(おのこ)として、女子が恥をかくのを見てみぬ振りは出来ませぬ。私が代わりに」
一瞬、目を丸くした一刀は筆を手に躊躇った。
「そ、其れは成らぬ……!」
美しい錦の顔へ墨の付いた筆を走らせる等と。が、此処で前へ出たのは日和と皐月。
「后妃様は駄目!私やる!」
「私も!」
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