新年。

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 年が明け、新たな春を迎えた東の御所。今年より、帝の傍らへは美しくも麗しい男子(おのこ)の后妃が並ぶ。  謁見の間にて、集まった東皇家の血縁者達が上へ並ぶ帝と后妃へ、一斉に拝をする姿。 「――帝。后妃様。謹んで、新春のお慶び申し上げまする!」  揃う厳かな声。一刀は其の声に応えるように、一度頷いた。 「面を上げい」  一刀の許しを得、一斉に上がる多くの頭。幾度と経験しても、錦にはまだ慣れぬ光景であった。僅かに顔を俯けてしまう錦を気に掛けながらも、一刀が口を開く。 「今年も無事、新年を迎える事が出来た。此れも、日々皆の働きあってこそだと心より感謝を申し上げたい。私も、本年より后を傍らへ置く事となった。我等の婚姻により、東西の国交は更に開けたと言って良いだろう。今年は、両国交の更なる進歩を目指したい。皆の働き、期待して居る――以上だ」  一刀の言葉に、再び一斉に拝する皇家の者達。 「御言葉、有り難く頂戴致しました!」  再び、厳かな声が揃い響き、錦の肩が跳ねた。拝したままの皇家の者達へ、一刀の言葉は続く。 「今年も皆へ心を込め、膳を用意した。ゆっくり楽しんで行って貰いたい」 「心より、感謝致しまする。帝!后妃様!」  又も響く声。しかし、今年より其の中に己も入れてくれた皆の言葉へ、錦は戸惑いもありながら嬉しさに、思わず微笑んでしまうのだった。
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