新年。

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「む、無理だよ……こんなに、沢山の方を前に……でも、もう少し皆様に慣れたら奏でられるかも知れないから……」  小声で続いた言葉に、一刀は笑みを溢し錦の髪を優しく撫でる。 「済まぬ、困らせたな……此方を向いてくれ」  等と錦の肩を抱き、耳元で囁くものだから錦は又肩を一度跳ねさせた後、固まってしまった。こんな大勢の前でと、恥ずかしさに瞼をも強く閉じて。 「み、帝……皆様がいらっしゃるから……っ」 「只肩を抱いておるだけだ」  一刀は譲らない。酒を注ぐ側の侍女は頬を染め、時折様子を伺っているのだが。 「で、でも、は、はしたない、よ……」  恥ずかしさで、錦の心の蔵は最早張り裂けそうな程の鼓動。と、そんな錦の体へ突然飛び付いてきた小さな体が。 「后妃様!明けましておめでとう御座いまする!」  元気な其の声に、瞼を開いた錦は驚きながらも、微笑んで見せた。 「神楽、明けましておめでとう」  錦の体へぴったりと引っ付いた少年は、あどけない笑顔を錦へ浮かべていた。神楽は一刀の最年長の従姉妹、霞の息子で、此の度帝位継承にも名が上がった者である。しかし、先の国交に繋がる婚姻を一刀が望んだ事と本人の強い希望で辞退となったのだ。 「神楽、はしたのう御座いますよ。下へ」  続いたのは、少々厳しさも感じる美しく通る声。一刀の従姉妹、霞であった。血筋なのか、霞と一刀はまるで姉弟の様に似ているのだ。霞は一刀を女性にしたような冷たく美しい瞳が特徴的な女性で、錦は未だに霞の前では少々緊張感を覚えてしまう。初めて顔を合わせた時は、其の美しさに視線すら合わせられずにいた程。 「構いませぬ、霞殿」  笑顔で神楽の頭を撫でる錦へ、霞は困った様に溜め息を吐く。 「申し訳御座いませぬ。后妃様が御優しいので、神楽はつい甘えるのです……其れに、帝が御機嫌斜めの御様子ですわ」
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