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0 メタモルフォーゼ、再び
災難は忘れた頃にやって来るという言葉を、ベタもベタ、使い古した言い方だと秋川は半ばバカにしていたのだが、いざ自分の身に降りかかってくるとそうも言っていられなくなった。
災難である短いメールが送られてきたのは、ようやく秋らしくなった十月の始めのことだった。
差出人は自他称『被写体と寝る男』の、カリスマフォトグラファー・ギフトだった。
秋川がギフトの元カレにして、秋川の今カレでもある瀬田の代わりにモデルを務めたのは、約一ヶ月前のことで、仕事の上では係わりがある瀬田はともかく、秋川にはそれ以後、何の連絡もなかった。
だから、秋川はモデルを務めたことを含めて、ギフトのことをすっかりと忘れてしまっていた。
もしかするとただ単に、記憶に留めておきたくなかったのかも知れない。
着信拒否設定にしなかったのを、今更ながらに後悔しつつも、秋川は何故、ギフトのアドレスを残しておいたのかを思い出した。
自分に連絡がつかないからと、瀬田にされるのを避ける為だった。
メールはただ、一文だけだった。
「Brilliant Daysの十一月号を見てみろ」と記されていた。秋川はその短い、短過ぎる文面を不意に蘇ってきた死体、つまりゾンビのように見つめた。
このタイミングでギフトこと、杉生から連絡が来たのも謎もナゾだったが、その文面も何のことだか秋川にはさっぱり判らない。
自分の知識の限界を早そうに覚った秋川は、手っ取り早く、しかも確実な現代文明の力、即ちインターネット検索に頼った。
ものの十秒で、Brilliant daysとは二~三十代の女性に向けたファッション雑誌であることが判った。
そして、件の十一月号の発売日が今日だった。
「ファッション雑誌・・・・・」
秋川の頭には、たった一つの可能性しか思い浮かばなかった。
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