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もう、オバケが怖いからといって、布団を被っている場合ではなくなってしまった秋川は、恐るおそる石サバへと尋ねた。
「どんなって、こんな風よ」
実に事無げに言い、石サバは無造作に雑誌を秋川の机の上に置いた。
「か、買ったんですか!?わざわざ?」
「そりゃあ、買うわよ。部下が表紙になるなんて滅多にあることじゃないし」
机の上でこちらを見ている顔は、紛れもなく秋川慎一その人のものだった。しかし、当の本人である秋川には今一つピンとこない。
思わず独りごちる。
「おれって、こんな顔してるんだ・・・・・」
「え?もしかして秋川君って、メガネ取ると全く見えなくなっちゃう人?」
「全くではありませんが、かなりボンヤリとしますね」
滅多にはないが、写真を撮る際にも眼鏡を外すことはないので、こうして外している顔をハッキリと見るのは一体、何時以来だろう?
カリスマフォトグラファーに撮影されようが、ファッション雑誌の表紙を飾ろうが、見慣れていない自分の顔をしげしげと見たくはなかった秋川は、雑誌を石サバへと返した。
「ありがとうございました」
「中、見なくていいの?特集、組まれてたわよ?」
「・・・・・・後で自分で買います」
とてもではないが今この場で、石サバが見守る中で自分の写真など眺められるハズがない秋川だった。
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