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「でも、自分が表紙の雑誌を買うって、恥ずかしくない?結構、勇気が要ると思うけど」
「パッと見で、おれだって判りますか?」
「判るわよ!私は秋川君がメガネ君だって知ってるけど、何、メガネ掛けて変装でもしてるつもりか?って思うもの!」
「変装・・・」
石サバの言葉が極論もいいところだと思う余裕は、今の秋川にはまるでない。
どうしたものかと思いあぐねている秋川へと石サバは、まさかの助け舟を出してきた。
秋川が返した雑誌を、再び秋川へと差し出す。
「コレ、あげるわ」
「え?いいんですか?」
「いいわよ。だって、恥ずかしいでしょ?私だったら又、買えばいいんだし」
文字通り、渡りに舟!とばかりに石サバの申し出に乗り掛け、雑誌を受け取りそうになった秋川だったが、寸でのところで手を止め、
「いくらでしたか?」
と言い足した。
石サバから全くのタダで物を貰うのは、心苦しいというよりは、後のちのことを考えると単純に怖かった。
喜んで乗り込んだ船が泥舟だったら、目も当てられない。
案の定と言うべきか、石サバは言ってきた。
「お金で何でも済ませられると思ったら、大間違いよ。秋川君」
「・・・・・・」
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