0 メタモルフォーゼ、再び

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 けして広くはないローテーブルの上は、瀬田が広げた「ブリリアントデイズ十一月号特別付録・ギフト撮り下ろし!特大ピンナップ」で占められた。  その左上にはタイトルらしきものが記されていて、秋川は思わず読み上げる。 「Sにおけるメタモルフォーゼ・・・」  Sとは、写真が公開された場合に使用することになっていた秋川のモデル名?だった。  本名を堂どうと晒す勇気も、小じゃれた芸名を思い付く余裕もなかった秋川は手っ取り早く、慎一の頭文字を取りSとした。  しかし、今こうしてピンナップを見ると、メタモルフォーゼのMと続けてSMと読める。 しかもその文の下の秋川の姿はというと、蝶ちょう結びとはいえ、ネクタイで両手を胸の前で縛められていた。 ギフトの確信犯的な配置だと、秋川は信じて疑わなかった。  ピンナップは左から右へと手首のネクタイが解かれ、着ているシャツのボタンが外され胸がはだけられと、少しずつ変わっていく秋川が写されている。  服装だけではなかった。表情も又、虚ろなものから次第に、目に光が灯り、意志を感じさせるような、しっかりとしたものに変わっていった。  当の本人である秋川は、どうしてこんな顔を表情をしたのかが全く、思い出せなかった。  ギフトこと、杉生は撮影に臨んで何と言っていたか? 確か、イモムシが蝶になる過程を撮りたいと言っていた。     
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