0 メタモルフォーゼ、再び

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 メタモルフォーゼとは、変容とかいう意味だったことを秋川は思い出した。 そしてこの、左から右へと流れていくような構図には見覚えがあった。 「エッシャーだ。おまえ、画集を持ってたよな?」 併せて、以前、瀬田の部屋で、それを見せてもらったことも思い出す。  かなり大判の、立派な装丁のものだった。 それで秋川は、瀬田がエッシャーを好きだということを知った。  瀬田はややあって、言った。 「えぇ、画家として好きなのはもちろんのこと、デザイナーとしても尊敬しています。・・・実は、あの画集は杉生さんからもらったものです。エッシャーのことをおれに教えてくれたのも、彼でした」  秋川も又、少し間をおいてから口を開いた。 「そうか。よかったな」 「え・・・?」  さすがの瀬田も絶句した。元カレからのプレゼントの話を聞いて、心穏やかでいられる秋川が正直、信じられなかった。  そんな瀬田に、秋川はそのままの調子で続ける。 「おまえが杉生と付き合っていた間、酷い目に遭っていなかったか気になってた」 「慎一さん・・・」 「・・・・・・知ったところで、おれには何も出来ないんだけれども」  苦く、少しだけ笑って言い足す秋川に、瀬田は自分の浅はかさを謝りたくなり、とっさに叫んだが、 「あ、あのっ!」 「晴季」  ものの見事に、秋川の声と重なった。 「何ですか?」 「いや・・・おまえこそ何だ?」     
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