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徘徊癖
寒い夜だった。
一人で酒を飲むのは良くないなと思うのはこれが何度目だろうか。
俺は酔いを覚ますために夜風に当たろうと、街を歩いていた。
誰にも会わない。誰にも見られない自由な時だ。
ここらの夜はそう長くない。
この時間じゃ、キャバ嬢もホームレスもガラの悪い輩も、もうとっくの昔に寝静まっている。
熱心に動き続けているのは、誰も通らない交差点の信号機だけだ。
大して高くもないビルが立ち並ぶ二車線道路を、所々に立つ街灯が静かに浮き上がらせる。
シャッター街に成り果ててから、一体どれほどの時が流れたのか。
灰色のそれらは、外から来た者を拒み、固く口を閉ざしているようにも見えた。
退廃的だ、と俺は思った。
退廃的で、感傷的で、狭く、冷たく、無機質で。
どうしようもなく残念なこの街が、俺は案外嫌いじゃない。
残念な自分を、少しは赦せる気がするから。
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