一匹目の供

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一匹目の供

桃村はそれほど大きな村ではないが、桃太郎が鬼ヶ島から持ち帰った宝や、定期的にある試練で持ち帰られた宝でそれなりに潤っていた。 ただ、潤っているのはごく一部であり、その中でもひときわ大きな屋敷に住んでいたのが桃太郎の家である。 桃太郎と言っても、鬼ヶ島に行った桃太郎ではなく、桃太郎が先祖の家である。 そして、桃太郎の家は代々その名前を継いでいくのが決まりであり、今の家も第何代桃太郎と名のっていた。 俺はこの桃太郎の家が気にくわなかった。 この村の村長は桃太郎から代々続き、今でも村長をしている。 始めの何代目かまでの村長はいい人だったそうだ。 だが、金銀財宝が人を狂わせたのか、いつしか桃太郎家が宝を独り占めし始めたのだった。 しかし、初代桃太郎のおかげでこの村があることは揺るぎない事実であり、鬼ヶ島に行く安全な道も桃太郎家しか知らない秘密であるため、村人皆が桃太郎家に頭が上がらないのだ。 表向きは鬼を懲らしめる試練だが、その裏には鬼の宝によって、桃太郎家が繁栄するという仕組みになっていた。     
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