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-D.W編-プロローグ
前回のあらすじ。
天都さんお水だけで頑張ってる。
以上。
「雑だな!?」
『うわビックリした。いきなり大声で叫ぶんじゃないよ小娘』
アダトームチャンバー内に蔓延る小型魔物の群れを、高圧力で打ち出す水流魔法の刃によって討伐し、前進していた天都。
あらすじに向かって威勢よく吠えたはいいが、まだ攻略序盤だというのに、息が弾んでいた。
「はぁ、はぁ…」
『なんだい、もうヘバったのかい?だらしないねぇ』
魔物の気配が周囲から消え、天都は一旦壁に寄りかかって休息をとった。
「はぁ…ふう…。もともと私は、魔法そのものでの戦闘が苦手なのでな…。武器に水流を付与して戦うのは得意だが、媒体となる武器が無ければ、魔力調整を行えないのだ」
『そんな調子じゃ、半分攻略するまでに魔力がスッカラカンになっちまうぜ?ちったぁ頭使って戦いな』
「うぐ…その通りだな」
天都は呼吸を整えつつ、異次元と繋がっているポケットの中をまさぐった。携行したものの中に状況を好転させる物がないか、取り出して確認してみた。
「ここに保管しているのは、新鮮な水と固形飯、創傷に効く軟膏、グライツベルグ(デフォルメ)…」
「すぴー…」
手のひらサイズのグライツベルグは、子猫のように身体を丸めて眠っていた。
『言っとくが、その茶大福の力を借りても失敗と見なすからね』
「言われなくともわかっておるさ。…すまないなグライツベルグ、ゆっくり眠るのだぞ」
「ぐるるぅ…」
グライツベルグの頬甲殻を撫でると、気持ち良さそうに喉を鳴らした。天都はグライツベルグを優しくポケットにしまい込み、中を物色した。
そのとき、とあることに気がついた。
『とにかく、突進一辺倒じゃ合格なんて夢のまた夢だよ。地形とか、持ってきた道具とか、その場にあるモンとかを有効に使って臨機応変に対応しねぇと』
「篠紅殿。」
篠紅が語っている途中で天都は力強く彼の名を呼び、クロムに人差し指を向け、しゃがむよう指示した。
クロムがしゃがむと、天都はワイシャツの襟を掴んで、ずいっとカメラに顔を近付けた。
「…すまないがあまり口出ししないでいただきたい。私は、自分で攻略法を見つけて合格したいのだ」
『…っクク、ずいぶんと意気がるじゃアねえか小娘。ま、そこまで言うなら、もう助言はしねぇよ』
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