きっと。

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「待った?」 「ううん。今来たところ」 「待たせてゴメンね」 「さあ、行こう」  隣で待ってた男性の元に、小柄でグラマラスな女性が駆け寄りキスしていた。期待したあとの落胆は大きい。初恋をした事がなかったから、失恋の心地も初めて知った。 「あ゙~……」  やりきれなさに思わず呻きながら、目を瞑って前髪をがしがしとかき乱す。 「お前は相変わらず、おっちょこちょいだな」 「……え?」 「何処の広場か書いてなかったから、一時間も寒空の下、探す羽目になったじゃねぇか」  瞳を開けて目に入ったのは、期待してた君だったけど、表情はぷうと頬を膨らませて三白眼で睨んでいた。佐藤? 本当にお前か? 幻じゃなくて? 思わず頬に触れて確かめようとしたら、思いっきり甲をつねられた。 「いたっ!」 「あのなぁ吉田、聞いてるのか? 俺、一時間走り回ったんだけど!」 「あ、ああ、悪かった。埋め合わせはする。クリスマスプレゼント、何が欲しい?」  夢かうつつか惑乱して、そんな俗な言葉しか出てこない。君の機嫌は直らない。 「その前に、何か言う事があるんじゃねぇか?」 「え……あ、その……愛してる」  瞬間、サッと君の男性らしく整った頬に朱が差した。決まり悪そうに視線が泳いだあと……君は、僕の肩に片手をかけ少し背伸びして、僕の頬にキスをした。 「え……え!?」  僕の取り乱しように、ようやく君が笑う。貴重な『デレ』だ。 「お前ひょっとして、自分が立ってる場所に気付いてねぇのか?」 「立ってる……場所?」 「ヤドリギだよ。クリスマスにヤドリギの下に立ってる少女には、キスして良い、っていうやつ」 「いや待て。僕は少女じゃないだろ」 「ふふ、少女みてぇに慌ててたくせに」  ああ……いつもの君が、機嫌の良い猫みたいに気紛れに笑う。僕は一瞬、それに見とれてた。 「で?」 「え?」 「何処に行くんだ? デートに誘ったからには、プランはあるんだろう?」 「あ……」  しまった。きっと君は来ないと思ってたから、そんな事さえ考えていなかった。君が呆れたように、形の良い眉尻を下げる。
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