第2章 過去の事件

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「ご挨拶が遅れて申し訳ありません」と着物姿の女性が、頭を下げて名刺を差し出した。 " オーナー 中条 美里 " と書かれていた。 やっと見つけた。この女だ。 「ママは源氏名では無いのですね?」と男が訊ねると「はい。オーナーですから」と美里は応えた。 確か昔は、" リサ " と名乗っていた。 「お店のネーミングはあなたが?」 「ええ、サンスクリット語で、" 心の平安 " っていう意味なんです。みなさんの心が落ち着ける場所であればと」と美里は微笑んだ。 よくも、抜け抜けと言えたものだ! 「あら?お客様、何処かでお会いしませんでした?」と突然、美里が訊ねた。 「気のせいでしょ。よくある顔ですから」と男は早々に切り上げた。 チカの情報によると、美里が金の集計で最後に一人で店に残る日は、明後日だな。 男は大通りに出て、タクシーに向かって手を挙げた。
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