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「なんだか気になっていたんだよ。あの殺され方、何処かで見た様な記憶があって…そしたらこれだよ」と古渕は書類を机に置いた。
中村は、その事件記録を読んだ。
三年前、長岡組が本庁との合同捜査で銃刀法及び麻薬の摘発により、組長以下、幹部数名を逮捕。
それが事実上の解散劇であった。
そしてその一週間後、河川敷において女性の遺体が発見された。
死亡内容は溺死となっているが、暴行を受けた形跡が多数見られたと記述してある。
何より驚いたのは、害者の左手だ。
薬指以外の全ての指が、切断されていた。
そしてその薬指には、結婚指輪が嵌められたままであった。
「犯人は自主して来た。元長岡組の下っ端のチンピラだ。しかし、それに異を唱える刑事がいた」
古渕は口をつぐんだ。
「誰ですか?」
「佐久間って言う本庁の刑事だ」
「でもどうしてそう思ったんでしょう?」
「チンピラが、通り魔的に出来る犯行ではないと考えたんだろう。ま、俺も同意見だが」
そして古渕は、害者の名前を指差して言った。
「この女性、佐久間の奥さんなんだよ」
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