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佐久間は少しして、言葉を発した。
「五十嵐を知ってるだろ?」
少し、美里の顔色が変わった。
美里は当時、長岡組長の女であった。
しかし同時に、幹部の加島とも恋仲であったのだ。
その事を知るのが唯一、加島の子分の五十嵐であり、二人の密会の手伝いをも行なっていた。
しかし自分の身が危うくなると、知りすぎた五十嵐は殺された。表向きは事故死として。
「身の危険を感じていたんだろう。五十嵐は色々教えてくれたよ。最期に妻の秋代の事も話してくれた。やつは俺の裏の情報源でもあったからな」
佐久間はその事を思い起こすたび、腹わたが煮えくり返る思いだった。
「くそっ!」と机の書類をぶちまけ、逃げようとする美里を掴み、後ろからハンカチを美里の口元に押し当てた。
「うぐっ!ううっ」
しばらく眠っていてもらおうか。
そして佐久間は、仕上げに取り掛かった。
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