第1章 第一の殺人

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神はこの世に存在するのだろうか? いや、もし存在するのなら、あんな事が起こる筈がない。 そしてもし居るとすれば、これから起こる事に、目を瞑っていて欲しい… 男は小雨の降る中、コートの襟を立てながら大通りを抜けた路地に入った。 真夜中の大通りは人影も殆どなく、路上で下水管の掘り返し工事が行われているだけであった。 くるくると点灯している黄色のパトライトが、心の高ぶりを尚も煽っていた。 男は路地の隙間から、通りを挟んだ三階建ての雑居ビルを伺っている。 すると、そのビルから一人の男が出てきた。 頬に古傷が見える。 やつだ! そしてその古傷の男は、この路地に向かって歩いて来た。 やつはいつもこの路地の奥にある、公園を抜けて帰宅する事は確認済みだ。 柱の看板の陰に隠れて、やつをやり過ごす。 そして間隔を空けて尾行した。
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