第1章 第一の殺人

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そこは緑の屋根の二階建てのアパートで、築年数は相当なものだろう。 男は階段を登り、二階の五部屋あるうちの一番奥のドアを開けた。 戸締りをして、湯を沸かそうとコンロに火を点けた。 カーテンはいつも閉じてあるので、部屋の中は薄暗い。 男は壁一面に貼られている、地図と写真を眺めた。 地図は近隣地区のものだろう。いくつもの赤線が引いてある。 そして写真に至っては数十枚あるだろうか? 色んなアングルから撮られた男と女がそれぞれ写っていた。 「次はお前だ」 男はそう言って、女の写真を一枚引きちぎった。 男は、ヤカンの噴き出す音を気にする様子もなく、ただ黙って写真を見つめていた。
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