昭和48年・春

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昭和48年・春

携帯電話もスマートフォンも無かった時代、旋に大好きな娘ができた。  彼女の名前は「秘密のメロディー」 本名は知らない。  同じ中学3年生で誕生日は3月、まだ14歳で、神奈川の横浜に住んでいて、私立の中高一貫の女子中学校に毎日電車で通っている。2つ下に弟がいて、今は卓球に夢中になって夏の神奈川県大会出場を目指して真剣に取り組んでいると言う事くらいしか知らないけれど、なぜか気になる存在。それは「好き」という感情に他ならなかった。  声を聴いたことも無ければ、もちろん顔も姿も知らない、だけど、旋は秘密のメロディーの考えている事、心の中の思いを誰よりも知っていると一人で感じ取っているような気持でいた。  私立中学の中高一貫校に通っているから中学三年生でも受験生ではない。そこのところは旋にとってはうらやましい限りだけれど、小学生の時に受験をして中学に進学したわけだからまあ受験の先輩でもあるわけで、旋も受験生という人生で初めて岐路に立ったことで受験をして進学するという経験を小学生の時にしてきたと言う事に尊敬ともいえる気持ちを持っている。  旋が秘密のメロディーに出会ったのは5月の事だった。     
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