昭和48年・春

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「先週の日曜日、友達3人で念願の百恵ちゃんのコンサートに行く事が出来ました。ものすごい人たちの数で 男の子達のほうが多かったんだけど、同じ中学3年生という事で感動のコンサートでした。百恵ちゃんって同じ中三の同級生なんて思えない大人の女性って感じで、凄く魅力的でした。りょうたんさんはラジオ局で本物の百恵ちゃんを見た事がありますか?」   「なんと 百恵ちゃんの新宿コマ劇場のコンサートに友達3人で行ったんだね。 う~~ん 俺も百恵ちゃんは局内で一度だけ見かけたことがあるけれど、確かに大人ぽくて、中学校の三年生には見えない感じだよね。」 「では、秘密のメロディーさんからのリクエストで 山口百恵ちゃんの新曲『としごろ』です。」  りょうたんは秘密のメロディーが友達3人で行ったという百恵ちゃんのコンサートの話題からリクエスト曲をオンエアーした。 「山口百恵ちゃんが生で見られるなんて やっぱり東京だよな、田舎じゃ考えられないことだし・・・。」   旋にしてみれば、それは夢物語の様な話だった。友達と連れ添ってコンサートに行くなんて事は発想にも出てこないし、アイドルってテレビの画面を通して見る 雲の上の存在の様なものだから、勉強部屋に貼ってある雑誌の付録の中三トリオのポスターを見てつぶやくのがせいぜいだった。  東京ナイト・フレンドで語られる東京発のいろいろな話題は、田舎の愛知県では嘘のような話ばかりだった。     
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