昭和48年・春

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話題の人気グループ・ガロのようなベルボトムのラッパジーパンにロングヘアー、トンボのサングラスメガネなんて 中学生で真似しても いがぐり頭の坊主ヘアーでは似合わないし、VANやJUNと言ったアイビースタイルやヨーロピアンスタイルを雑誌で見てまねてみても、似合っていないのは自分でもわかっていた。東京の都立中学では制服が自由化され始め、学生服が廃止された学校も登場したと言うニュースも流れていたが、田舎の中学校では夢の様な話だった。  髪の毛は耳に被らない。襟足は刈上げが基準で、女子ならオカッパ頭か三つ編みにすること。シューズはオニツカタイガーのスニーカーシューズ程度で、カバンで許されるのはマジソンスクエアーバックまで。自転車通学では、交通事故の死亡事故が1万人を超えたと言う交通戦争と言われる社会の中で安全ヘルメットの着用が義務付けられていた。  たまに愛知県の都会と言われる名古屋の街に繰り出しただけでも、都会の風を感じて 三河地方の田舎町との違いを感じてしまうほどだった。東京では地上36階建ての霞が関ビルがそびえたち、名古屋でも駅前には地上26階建ての高層ビルの建設が来年の完成を目指して工事がちゃくちゃくと進んでいる。駅前には大名古屋ビルや名鉄百貨店など10階を超える見上げる様なビルがいくつも立ち並び、旋のいる三河の地方都市では街の中を見渡しても4階建てのビルが最も高く、本当に田舎に暮らしているという事を自覚してしまうのが常だった。田んぼと畑が広がり、最近開発された自動車会社の大きな工場だけが時代の変化を伝えていたが、テレビで伝えられるような都会の出来事や流行とは程遠い様なのんびりとした毎日だった。     
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