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ーーどうする。どうやって製品の良さを説明すれば良い!?
悩むのも束の間。
風向きが変わったことで、僕たちの高度も下がっていった。
灰色の地面が近づき、とうとう落下した。
僕は両足でコンクリートを蹴りつけるようにして勢いを殺し、手すりに体をぶつける事で、どうにか止まる事ができた。
そうやって着地したのは……どこかのビルの屋上だった。
辺りを見回して場所を確認しようとした。
だが、何かに気づくよりも早く、切羽詰まった様な声に反応した。
「うわあーーッ!」
「磯辺様! 掴まってください!」
目の前を飛びすさろうとする磯辺さんの手を掴み、窮地から助け出そうと試みた。
だが、勢いが凄まじい。
相手を屋上に留める事ができず、外へと投げ出されることを許してしまった。
「た、助けてくれぇ!」
ここは地上30階はあるだろう高層ビルだ。
磯辺さんの命を繋ぎ止めているのは、僕の右腕のみ。
でっぷりと太り、筋力の不十分な彼の力だけでは、この苦境を乗りきる事は不可能だろう。
「今引き上げます! せぇの!」
「うわぁ!」
僕はその巨体を軽々と持ち上げ、安全圏へと助け出した。
お互いに怪我は無いようだ。
磯辺さんは荒い息を吐きながらも、震える声で感謝してくれた。
「ありがとう、ありがとう! 君は命の恩人だよ!」
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