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第1章 柚希、狼台の神様に願う
「大ぎぐなっだなー。めんごいまんまだげど」
無人駅に着いた僕を満面の笑みで出迎えたのは、おじいちゃんだった。
「こんにちは、おじいちゃん」
僕こと、鷹山柚希は早生まれの11歳。小学校6年生だ。
ママから東北の夏は涼しいって聞いていたけど、充分に暑かった。
おじいちゃん家は3年振りかな、前に帰省した時は車だった。
だから、この駅を使うのは初めて。
後ろを振り返ると、直接ホームが丸見えだ。
古びた案内板には『狼台駅』と書いてある。
おおかみだいえき、ではない。
だって、アルファベット表記はOinodaiと書いてあるから。
僕はおじいちゃんが乗って来た軽トラックの助手席に乗りこんだ。
ペンギンを模したスーツケースは後ろの荷台に積まれたらしい。
僕はお財布とおじいちゃん家へのお土産だけを持って座っていた。
軽トラックでの目線は、他の車より高くて、ちょっぴり大人になった気分だ。
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