第2章 柚希、フランケンに出逢う

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熊がゆっくりと僕に向かってくる。 終わった……。 学校ではいじめられて、こんな山で熊に喰われて死ぬなんて、不幸すぎる。 その時、僕と熊の間に何者かが割って入った。 熊ほどではないが、大きな体躯は木漏れ日で銀色っぽい毛並みをしていた。 狼を思わせるそれが咆哮すると、熊は戦意を喪失し、逃げかえった。 僕は助けてくれたんではなく、縄張りの中の食糧の奪い合いだと理解した。 つまり、僕の運命は熊に喰われるか、狼に喰われるか、その違いだけだ。 狼が僕を振り返り、 「だから、そっちじゃないと言っただろう」 と僕を(いさ)めた。 え?今人間の言葉を話した?助けてくれた? 「チッ、腹減ってるからな。時間切れだ」 銀色の狼が縮んでいく。 恐る恐る近づくと、そこには見たことのない小犬が横たわっていた。 「君だよね、今助けてくれたの。でも……」 「でも、何だよ、はっきり言えよ」 「でも、大きさも毛色も違くね?」 「うるせえ、ニンゲン。何か食いもん持ってねえのか?」 僕はリュックからお菓子を取り出して、異形(・・)の小犬に与えた。 だって、この小犬はまるでパッチワークのようにツギハギだらけだったんだ。 色んな毛皮でつくられたぬいぐるみ、、、それがピッタリな表現だと思う。 これが僕と、人語を話すパッチワークドッグ・フランケンとの出逢いだった。
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