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熊がゆっくりと僕に向かってくる。
終わった……。
学校ではいじめられて、こんな山で熊に喰われて死ぬなんて、不幸すぎる。
その時、僕と熊の間に何者かが割って入った。
熊ほどではないが、大きな体躯は木漏れ日で銀色っぽい毛並みをしていた。
狼を思わせるそれが咆哮すると、熊は戦意を喪失し、逃げかえった。
僕は助けてくれたんではなく、縄張りの中の食糧の奪い合いだと理解した。
つまり、僕の運命は熊に喰われるか、狼に喰われるか、その違いだけだ。
狼が僕を振り返り、
「だから、そっちじゃないと言っただろう」
と僕を諫めた。
え?今人間の言葉を話した?助けてくれた?
「チッ、腹減ってるからな。時間切れだ」
銀色の狼が縮んでいく。
恐る恐る近づくと、そこには見たことのない小犬が横たわっていた。
「君だよね、今助けてくれたの。でも……」
「でも、何だよ、はっきり言えよ」
「でも、大きさも毛色も違くね?」
「うるせえ、ニンゲン。何か食いもん持ってねえのか?」
僕はリュックからお菓子を取り出して、異形の小犬に与えた。
だって、この小犬はまるでパッチワークのようにツギハギだらけだったんだ。
色んな毛皮でつくられたぬいぐるみ、、、それがピッタリな表現だと思う。
これが僕と、人語を話すパッチワークドッグ・フランケンとの出逢いだった。
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