時計塔

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時計塔

 夢のお城のような時計塔は、駅前の象徴である。  人々が行き交う雑踏の中で、時刻を告げるオルゴールが鳴る。市長がこの時計塔のために有名な音楽家に作曲を依頼したものらしい。  独特の楽し気な旋律は、最初はなにか変な違和感があったけれど、今となっては忙しい駅前の日常に馴染んだ。  ノスタルジックだけど、華やかで楽しい感じがする。  夕暮れ時の駅前は朝とは違った忙しさがあり、冷たい赤味を帯びた夕暮れが人々の影を歪に長く伸ばした。日没前の駅前の空気は雑然としていて、夕食の支度や、これから会社に帰て今日中にしあげなくてはならない仕事の残りの事や、さまざまな人々の思考が渦巻くようだった。  駅前のベンチに座り、わたしは時計塔を眺める。  かちゃんと軽い音がして、ミニチュアの楽団が飛び出してきてくるくる回りながら音楽を奏でるという趣向だ。  そのお人形たちはカラフルな衣装をまとい、おどけたような表情でラッパやバイオリンを持っているのだった。  らったった、らったった。  ろんろんらったった。     
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