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第1章 悪魔との契約
この国は腐ってしまった。
政治家が国の財政を私欲の為に使い続けた結果、政治の場所は汚職にまみれ、今や日本国の未来は風前の灯だ。
俺がこの国を変えなければ。
そして俺は悪魔と契約をすることにした。
「私の悪魔の力をもってすれば貴様をこの国の絶対的な権力者にしてやることなど造作もない。しかし、その見返りとして、貴様にとって一番大事な色をもらおう。貴様の大事な色は何色だ?」
「俺の大事な色?そうだな…。俺の生き様を色に例えるならば、それは白だ。真っ直ぐに清廉潔白に生きるのが俺の心情だ」
「ならば貴様がこの国の絶対的権力者となったとき、貴様から白をもらうことにしよう」
「問題ない。命以外なら何でもくれてやる」
「契約成立だ」
かくして俺は悪魔の力を味方につけ、瞬く間に政治の世界に躍り出た。
悪魔の力は凄まじかった。
この国を導く人間は民衆の代表として極平凡な人間であるべきだ、というプロパガンダが町中に溢れ、極端なポピュリズムが急激に広まった。すると現政権を過激に批判していた俺のブログに白羽の矢が立ち、あっという間に民衆代表として政治の場に祭り上げられた。
それと同時に、国を導く人間は国民が直接選ぶべきという国民の意識の変化によって日本国は大統領制に移行。そして驚く程のスピードで憲法を含む全ての法律が大統領への権力集中のために改訂され、第一回国民投票により俺は初代日本国大統領となった。
大統領就任日の夜、ようやく自宅で1人になったとき、悪魔の声が頭に響いた。
「これで貴様はこの国の絶対的権力者だ。契約どおり、貴様から白をもらう」
「ああ、やってくれ」
俺は目をつむった。
……
……
……
終わったのか?
目を開ける。特に変わった様子はない。
歯が無くなる位のことは覚悟していたのだが、歯もちゃんとあるし、着ている白ワイシャツにも白の下着にも何も変化はない。
一体何が奪われた?
白…といっても、日常で完全なる白色に出会うことはない。
俺の歯もシャツも、白っぽく見えるだけで完全な白色ではない。完全な白でないものは奪われないのか?
いや、何か必ず奪われたものがあるはずだ…。
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