クリスマスはクルシミマス

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「ケーキいりませんか?  クリスマスには甘すぎない、和三盆を使った  限定生ケーキいかがですか?」 人ごみでビラを配る俺、 こんなビラを配ったって 限定100個が売り切れた試しなんてない。 クリスマスはやっぱり有名パテシエのいる 洋菓子店で購入する人がほとんどだし、 最近ではネット宅配の人もいるし、コンビニだって売っている。 大して有名でもない和菓子屋のケーキなんて 買おうと思うわけがない。 毎年、 『全部売れるまで、寝られると思うな!』 横暴オヤジのおかげで、 クリスマス前後は地獄のクルシミマスだ。 申し遅れました。 俺、藤吉 辰巳(ふじよしたつみ) 35歳 小さな和菓子屋の3代目……になるかもしれなかった男 しかし、現在普通の会社員。 こんなビラ配りをしているけれど。 後を継がずに会社員になる交換条件は、 毎年100個のクリスマスケーキを売り切ることだった。 そんなの出来るはずもなく、 毎年、売れ残ったケーキは買い取って、 会社のみんなに配っているのだ。 そう、自腹で。 だから残らない俺のボーナス。 今年は新しいPCをボーナス払いで買ってしまったこともあり、 このケーキを売り切ることは俺の死活問題なのだ。
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