0人が本棚に入れています
本棚に追加
魔女として暮らして、もう五百年は経つ。仲間も増えて、愛しい恋人もできた。最早、憂など一つもありはしない。自分の周りに憂など微塵も感じはしない。
今宵は夜風に当たりたくて、月が見える高さまで舞い上がる。お気に入りの杖はしっかりと私の体を支えて、安定した場所に居る。夜空は淡い光で輝いて冷たい夜風が心地いい。
身につけたローブが風に撫ぜる。
こんなに満たされている。こんなに幸せでいる。なのに、どうしようもなく虚しくて、哀しくて、苦しいのは何故なのか。その答えがいつまでもわからない。
月が白く輝く。
「ああ、そういえば」
私は白が嫌いだったな。その理由もよくわからない。五百年も生きていて自分のことがわからないなんて、笑われてしまう。でも仕方がない。ずっと私は背けてきたのだ。自分の姿を見ることを。だから自分のことが完全に理解できていない。我ながら幼稚な理由だ。こんなことでは世界最強の魔女とは言えないな。
「ふう……」
そっと、空にため息を吐く。その息は白く綺麗で、自分の口から出しているのが、不思議に思えた。
どうして白はこんなにも綺麗なのか。そんなことを思ってしまうほどに。
そんなことを考えていると
最初のコメントを投稿しよう!