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人がまばらな新宿のカフェで佐藤真也と吉野麻衣子がテーブルにいる。
麻衣子が言った。
「子供ができたの」
意を決したような表情で麻衣子が真也に告げた。
「え……っ」
真也は目を丸くした。
「自分の子か疑ってるんでしょ。私、今あなた以外の人と付き合ってないから。正真正銘あなたの子よ」
麻衣子はコーヒーカップに視線を落としながら言う。
「年齢的にもこれが最後の子供だと思う……。だから産もうと思ってる。あなたは認知してくれればいいから……」
麻衣子は淋しげな表情で言った。
自宅へ帰った真也は、もう一人の彼女であるなるみとテレビを見ながら談笑していた。ただ、心中は穏やかでない。
「そういえばさ。しんちゃん、なるみに何か隠し事してたりしないよね……?」
急になるみが沈痛な面持ちで言う。
「えっ。どうして?」
動揺する真也。
「しんちゃんはお金持ちだから。きっと他の女の人にモテるんだろうなって。私はしんちゃんとの将来、真剣だから」
真也はなるみから目を逸らした。
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