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じゃあな あ、じゃ 手も振らず、違う方向に歩く僕らだが舌打ちだけは タイミングが一緒でお互いに聞こえないと思うラインが実は一番、嫌な思いをするラインだったりね ま、気にしないのがお互い、一番だよね そうこうしてる間に教室だ。あ、電気が……… 誰だろか 「やあ。夏蜜柑」 おっと。タイミングがちっと悪いね。 「やあ。冬西瓜。どしたの」 そのクラスメイトの名は仲田結生(なかだゆき)。 俺のお母さんの親友の娘で 「別に。ちょっと描きたいもんがあったから」 女性なのに俺の親友だったりもする。でも今はちょっとだけ会いたくなかった 「はい。忘れ物でしょ。どうぞ」 「え?なんで?わかったん?」 「分かるっしょ。長いもん」 ラフな言い方で、冬西瓜は言った。分かるっしょと 言われれば分かるが、ちょっと雑では?と思いながら、渡されたノートをパラパラとチェックする。 つまらないぐらいに問題無しだ 「そう言えばこないだも賞貰ったんだって?凄いじゃん」 「あ、優秀賞か。大した事は無いよ」 さっとノートに何本か線を描きながら、西瓜はつまらなそうにした。いつも通りの機嫌だ 「はああ~夏蜜柑もすっごい絵、上手いんだから出せばいいじゃーん」 「あいにく俺は自由人だ。やらねーよ」 ふっと俺が笑うと、西瓜も"らしいね"と言わんかの如くふっと笑った。何故か昔から安心する顔だ。西瓜はこうでなくては 「そんなんじゃいつまで経っても仲悪いままだよ。 みーのーる とね」 「稔とは無理だ。僕が変わってもアイツが変わらない限りね」 たっ……と、席を立つ。すっかり女性らしくなった身体だ。あの頃とは似ても似つかない 「ちくちくしてんね」 「え?何が?」 靴をきゅっと鳴らし、俺の胸に触れて言った 「こころがー」 その一言には驚くばかりだった。見てたのかもしれない。さっきの出来事を 「ま、それはみんなそうだけどさ。私も稔もみーんなさ」 その瞬間、さっき言った言葉が体内で爆発する様な恥ずかしさに襲われた。そうだ、稔は西瓜の……彼氏だったんだっけ 「ごめ……ん」 「謝る事は無いさ。私は嫌うのも程々にーって感じだったんだけど」
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