置き土産

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「また描いてるの?」 ナースさんに、声をかけられる。 「うん」 僕は筆を止めて、ナースさんに見せた。 「あっ、この子もかわいいね。一体どのくらい描いたの?」 僕は眼で合図した。 スケッチブック10冊分はあるだろうか・・・ 僕は、生まれた時から重い病気で、この病室だけが僕の空間だった。 そして、このナースさんだけが、僕の絵の唯一の読者だった。 僕は、ナースさんに褒めてもらうためだけに、描いていた。 それが、何よりの励みだった。 「この子たち、どうするの?」 ナースさんに、訊かれて僕は、 「向こうへつれていくよ」 そう、答えた。 さすがに、「墓場に持っていく」とは、怖くて言えなかった。 ナースさんは、励ましてくれるが、もうわかっている。 ナースさんも、主治医も、両親も、そして、何よりも僕が・・・ 就寝時間になり、ナースさんは部屋から出る。 もっとも、ナースコールを使う事もできるが、 預保出ない限り、使わなかった。 薬を飲んで、抑えていたが、いよいよお迎えが来たようだ。
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