四十三人目

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 本能でそれを察し、俺はかけられる言葉に決してうなずかないことにだけ意識を集中させた。  チャイムの音と共に意識の緊縛は解かれた。  いつも以上に疲れ果て、後ろを振り返ってみるが、背後にはもう誰もいない。  最終の授業から放課後のホームルームまでという僅かな時間ですら、あの転校生はいなくなる。でもホームルームが始まる時には戻っていて、先生が教室を離れる時にはもう姿を消しているのだ。  本人の印象が薄すきで、深く関わろうと思わないから何をしていても気にならなかった。でも今は、転校生の行動がかなり異常ものだと認識できる。  他のクラスメイトに聞いても、いまだに、まともにあいつの名前を覚えたという奴はいない。顔も、教室内にいなかったら、廊下ですれ違っても本人だとは判らないと言う奴ばかりだ。  生来なのかわざとなのか、誰にもきちんと認識されていない存在。そいつが俺にだけ何かを話しかけてきている。  気味の悪さを拭えないまま、疲れた体を引きずるように帰宅する。と、珍しい相手に出くわした。 「よう、久しぶり」  家にいたのは母方のいとこだった。家はそこまで遠くないが特に交流はない。というのも、こいつは根っからのオカルト好きで、普段からどうにも話が合わないからだ。 「随分顔色悪いけど、幽霊にでも憑りつかれてるの?」  すぐこういうことを言ってくる。  いつもなら絶対相手にしないけれど、俺にとってあの転校生は、まさに憑りついてきている幽霊のような存在で、つい、いとこの話に相槌を打った。 「ああ、かもしれない」 「俺の話に乗ってくるなんて珍しいね。何か、妙な体験とかしたの?」  目を輝かせて尋ねてくるいとこに、俺はあの転校生のことを打ち明けた。 「あれ? そういう話、どっかで聞いた気が…」  俺の話を聞くなりそうつぶやき、いとこはスマホで何やら検索を始めた。 「これこれ。このサイトの、この書き込み。見てよ」 言われるまま書き込みに目を向ける。そこには『四十三人目』というタイトルと、名無しと書かれた投稿者名、そして書き込み内容が記されていた。 「四十二人が定数になっていた所に四十三人目が現れると、元々の定数の中から一人が、この世の外へ押し出されてしまう。何故なら四十三人は、四十二人=四二人=しにん=死人を超えた人数だから…何だこれ」
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