四十三人目

4/5
前へ
/5ページ
次へ
 そう決めて立ち上がろうとしたのだが、足腰にまるで力が入らず、席を立つことができない。その状態に気ばかり焦っているとチャイムが鳴り、すぐに教室へ先生が入ってきて二時間目が始まった。  転校生も戻って来ている。そしてずっと俺に『代わって』と訴え続けてくる。  これに応じたらどうなるのだろう。そう考えた俺の脳裏に、昨日いとこが見せてきたオカルトサイトの書き込みが浮かんだ。  四十三人目が現れると、四十二人の中から一人押し出される…確か、この世の外へ。  もしこの訴えに応じたら俺は死ぬのか? それとも、死ぬこともできないどこかへ追いやられるのか?  絶対にダメだ。応じるなんてありえない。 「代わって。俺と代わって」  俺が考えたことは筒抜けなのか、いきなり訴えが強くなった。  せがむように…むしろ脅すように、俺に立場を代わるよう強要してくる。でも、首を横に振ることも嫌だと拒絶を上げることもできない。  このままだと押し切られる。どうすればいい? どうすれば俺は助かることができる?  混乱しかける脳の奥に、いとこの能天気な声が流れた。  ろくに耳を貸さなかったけれど、一応聞こえていた書き込みの続き。その時のいとこの声が脳内で再生される。 「四千七百七十一!」  頭に浮いた数字が勝手に言葉になり、俺は立ち上がりながら大声でそう叫んだ。  背後から強いショックなようなものを感じた気がしたが、そこで意識を失った俺には、この後のことはよく判らない。ただ、潮が引くように、背中に感じていた凄まじい圧が消えたことだけは理解できていた。  気づいた時、俺は保健室のベッドに寝かされていた。  側につき添ってくれていた保健の先生が、目を覚ました俺を見て安堵する。  時間を聞くと、まだあれから一時間程度しか経ってないらしかった。 「大丈夫? 熱、測ってみましょうか」 「あ、いえ、多分大丈夫です。…ここ最近寝不足で…」  適当な言い訳を口にしたら保健の先生が少し笑った。理由を尋ねてみると、倒れた俺は先生と二、三人のクラスメイトに保健室に運んでもらったらしいのだが、倒れた時の様子を尋ねたら、いきなり立ち上がり、あの数字を口走ってひっくり返ったと聞かされたのだと言う。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加