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「寝不足なら、もしかしておかしな夢を見て、それが原因で倒れちゃったのかもしれないわね」
このやりとりの後、早退するかどうか問われたが、結局俺は昼まで保健室に置いてもらい、昼休みを待って教室へ戻った。
「おい。大丈夫なのか?」
俺の顔を見た仲の良いクラスメイトが心配そうに駆け寄ってくる。その面々に、寝不足で居眠りをしてしまい、寝言まで口走ったらしいという、保健室で練り上げたた言い訳を聞かせると、一同は心配顔を破顔させ、呆れながらも平気ならよかったと言ってくれた。
それに相槌を打ちながら、俺は慎重に、自分の席の後方に目を向けた。
なんとなくそうなのではと思っていたが、やはり転校生の席がない。
「俺の後ろに置かれてた、転校生の机は?」
「転校生? お前、まだ夢見てるのかよ」
その返事に、俺は、自身に降りかかっていた脅威が完全に去ったことを確信した。
倒れる間際に圧が消えるのを察した時からこうなる気はしていたが、転校生の存在自体がなかったことになっている。
誰にも覚えられず、誰とも関わろうとしなかった転校生。それもその筈だ。あいつは元々このクラスに、自分となり替われる相手を見つけに来ていただけなのだから。
たまたま席が前後したから俺が標的になっただけ。そして、このクラス…いや、この世界での俺のポジションを乗っ取れず、消えた。
偶然にも一クラス四十二人だった。あいつがこの学校に現れた理由はそれだけで、それがうちのクラスだったのもただの偶然にすぎない。
最初から俺が狙われていた訳じゃないし、撃退した以上、あいつはもう俺の前には表れないだろう。
それにしても、いとこのオカルト趣味もたまには役立つことがあるんだな。
今度会ったら礼を言わないと。それとも、今回の話を残らず語った方があいつは喜ぶかな。
でも、オカルトな書き込みのおかげで助かった俺が言えることじゃないかもしれないが、撃退の言葉が四千七百七十一…位の部分を省略すると四七七一。
語呂合わせで『しなない=死なない』。つまり、死人を超えた存在を退ける言葉になってるって…助かって嬉しいけど、このダジャレに救われたのかと思うと、俺はかなり複雑な心境だよ。
四十三人目…完
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