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でもすぐに、顔を前に戻して、別段面白くないだろう窓を見つめる。
こいつはずっとこんな調子だ。
「じゃあニルでいいや。
わかるか?
縄だぞ。
な、わ」
手首の先から延びる縄の先端を左右に振ってやると、机の脚にしがみついていたニルが飛びついてきた。
ニルが小さな歯で縄に噛みつく。
慌てて動かすのを止めた。
「お前は犬か」
ニルは言葉を喋れない。
多分文字を書くこともできない。
加えてこれだ。
意思の疎通は半ば不可能と言える。
テフとニル。
この二人とコミュニケーションを取らないシャリスの態度も、まあわからなくはないな。
俺も少し困っている。
何一つ困ったことなんて無いような顔で、エリカが笑った。
「いいなあ、タナカ君。
ニルちゃんに愛されてるなあ」
「心理学的に、これは愛情表現なのか?」
エリカがニルの頭をそっと撫でると、ニルは口を開けた。
「うーん……。
愛ってことにしとこ。
それかお腹が空いてるのか」
「お、もうそんな時間か」
「うん、12時回ってる」
「じゃあ食うか。
っとその前に、君ら、ちょっと良い子にしててくれ」
シャリスが鼻を鳴らす。
「あの糞メガネへの報告か」
「今からその糞うんこと通話するから、間違ってもご機嫌なこと言わんでくれよ」
無言でシャリスが俺の縄を解く。
みんな、無表情になる。
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