ep1

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「と、いうわけで、初めましてか。 俺はタナカ・タロウ」 ぷっとエリカが噴き出す。 笑うとなかなか可愛らしい。 「おいおい、別にへんな名前じゃないだろう?」 「だって、君、タナカって顔じゃないもん!」 「東のやつには結構ウケルんだよな、この偽名」 まずは一人ずつ、隣室での個人面談という形で話をしてみることにした。 順番は、飴に飛びついた順。 手元の書類を読み上げる。 「ええっと、名前はエリカで合ってるよな。 苗字とかって無いんだっけ」 「うん」 「おっけー。 年齢は……28」 「君よりお姉さんだったりする?」 「お姉さんってか、おば……」 「おいこら!」 「あー、えっと、まあそこは深く考えないように努めよう。 性格は、楽天主義としか書かれてねえな。 うん、みりゃわかる」 「楽観主義って言ってほしいな」 「どう違うんだ?」 「何も考えてないか、それとも戦略的ポジティブシンキングなのかってところね」 「へえ。 流石精神科医やってらしただけある。 よくわかんねえけど」 ここで初めて、エリカの笑顔が途切れる。 「やっぱり、そういう話?」 「そりゃそうさ。 んでも、話したくないことは話さなくていいぜ。 あのメガネには、デマ言っとくからさ」 「ふーん。 ……タナカ君、私たちに随分優しいよね。     
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