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毎回授業が終わるたび彼女のところに行こうとするが、周りには人がたくさん群がっていて行ける状況じゃない。しかも一時間目、二時間目と時間が過ぎていくごとに周りの人が増えていた。多分どんどん情報が学校全体に回っていっているからだ。 そしてあっという間に帰りのホームルームの時間になっていた。 帰りのホームルームの時間には、長塚歩美がいるクラスでの最後の集合写真を撮った。そしてクラスの一人一人が一言ずつ長塚歩美にお別れの言葉を言うことになった。 言いたいことが山ほどあったが、僕は「いろいろとありがとうございました。またどこかで会いましょう」と無難な事を言った。だが「もう彼女がいなくなってしまう。もう話すことも、見ることさえできなくなる。これが最後の言葉かもしれない」と思うと、色々と胸にこみあげてくるものもあるが、なんとか抑えた。 そして帰りのホームルームの終わりのチャイムが鳴った。 僕は彼女のもとに向かおうとして椅子から立った瞬間足がすくむ。 長塚歩美に目を向けると、彼女の周りにはハエのように人が群がっていた。 「これじゃ無理か」と諦めてバッグを持とうとした時、長塚歩美が廊下に出ていこうとしていた。 「この瞬間を逃したらもう無理だ」と思い、僕は急いで廊下に出た。 廊下には彼女の背が見えた。しかし隣には学ランを着た男の姿があった。だがここで諦めたら一生後悔すると思い、 「長塚!」と呼んだ。 「・・・・・・」     
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