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今の力で引っ張ってもなかなか取れそうで取れない感じがした。
意を決して強く引っ張ってみると、トノサマバッタの片脚はすぐに取れたのだった。最初は少し抵抗があったが、捕まえた四匹の足を取っていくうちに、罪悪感はなくなり、淡々と取っていたのである。
脚を取られたトノサマバッタは、ぎこちなく動いていて飛ぶことはなかった。
それをじっと見ていると、後ろに人の気配があった。
後ろを見てみるとそこには仕事から帰った父が居たのである。
「ただいま。何をやっているんだい?」
父はいつもの穏やかな口調だが、その目つきは人を問い詰詰めるようなものだった。
「公園で捕まえたバッタで遊んでるんだよ」
「なんだかバッタ動きが変だね」
「気のせいだよ」
「いや気のせいじゃない。動きもぎこちないし、なんだか希望を失ったようにみえる」
父は相変わらず同じ目つきで僕に言った。
「ごめんなさい。僕が脚を取っちゃった、取ってみたらどうなるのか気になって」
父の目つきに圧倒されて、正直にいった。
僕は怒鳴られると思い覚悟をした。
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